中小企業成長加速化補助金(100億円企業を)
- Hirotaka Nanjo
- 2月7日
- 読了時間: 13分

新たに、令和6年度補正予算において創設される、総予算1000億円の中小企業向けの補助制度です。
売上高100億円を超える中小企業を安定的に増やすために、売上高100億円を目指す中小企業に対して、設備投資の支援。また、中小機構を通じて、M&A(企業の合併・買収)や海外展開、人材育成など、さまざまな経営課題へサポートする制度です。
中小企業成長加速化補助金の活用イメージ
以下の取り組みが対象となっています。
①工場、物流拠点などの新設・増築
②イノベーション創出に向けた設備の導入
③自動化による革新的な生産性向上
中小企業成長加速化補助金の補助対象事業者
売上高100億円を目指す企業とあるため、現在の年商が30~80億円程度の企業を想定しています。また、新規事業進出補助金(新規事業用の補助金)やものづくり補助金もある事から、当制度は、大規模成長補助金のように既存事業の拡大に使える制度と思われます。
※みなし大企業は補助対象外です
※見なし大企業とは、中小企業や中堅企業ではない企業です(また大企業が株主構成の過半数を超えてない企業)
※中堅企業とは、中小企業ではない、常時使用する従業員数が2,000人以下の会社等を指します
中小企業成長加速化補助金の補助率と補助上限金額等
必要な投資規模、補助率・補助金額は次のとおりです。
補助額
~5億円
補助率
1/2
採択件数
2.5億円が補助金平均値の場合、約400社
※採択数が400社程度の場合、採択率は20%、大規模補助金のように2回程度で終了する事も多いため周到な準備が必要です
中小企業成長加速化補助金の要件
①投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
②「売上高100億円を目指す宣言」を行っていること
③その他、賃上げ要件(おそらく賃上げ率5%超など大規模投資補助金と同様と推定)
投資総額1億円以上とあり、大規模成長投資補助金の1/10の規模となっています。
※最低投資額や賃上げ要件などの記載もありますので大規模補助金と同様の審査基準になると思われます。
中小企業成長加速化補助金の主な補助対象経費
補助対象経費は、成長拡大のための
・建物費(拠点新設、増築等)、
・機械装置費(器具・備品含む)、
・ソフトウェア費、
・外注費、
・専門家経費の5項目です。
主に使ってよい経費は、建物費(拠点新設、増築等)、機械装置費(器具・備品含む)、ソフトウェア費の3経費です。詳細は以下の通りです。
1. 建物費
専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費(単価100万円(税抜き)以上のものに限る)
※備考
・生産設備等の導入に必要な「建物」、建物と切り離すことのできない「建物附属設備」、及びその「付帯工事(土地造成含む)」は対象
・建物の単なる購入や賃貸、土地代、建物における構築物(門、塀、フェンス、広告塔等)、撤去・解体費用は対象外
2. 機械装置費
① 専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費(単価100万円(税抜き)以上のものに限る)
② ①と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費
※備考
・「機械及び装置」、「器具及び備品」、「工具」は対象
・「構築物」、「船舶」、「航空機」、「車両及び運搬具」は対象外・事業者とリース会社が共同申請をする場合には、機械装置又はシステムの購入費用について、リース会社を対象に補助金を交付することが可能
3. ソフトウェア費
① 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用、クラウドサービス利用に要する経費(単価100万円(税抜き)以上のものに限る)
② ①と一体で行う、改良・修繕に要する経費
中小企業成長加速化補助金の想定スケジュール
1回公募は2025年5月ころの予定です。
中小企業成長加速化補助金の採択率は?
1回公募の予測採択率は、20~30%程度と推定しています。
大規模成長補助金の1回目採択率14%、事業再構築補助金の直近採択率30%弱であり、その中間に位置する同事業はやや厳しい数値となると思われます。
採択されやすい事例は?
1. 既存技術・ノウハウの新分野展開
以下のように、自社のコア技術を新しい業種へ応用し、新市場を開拓するパターンは採択されやすい傾向があります。
医療機器メーカーの技術を転用してウイスキー製造へ参入
例示にもあるように、精密加工や品質管理などのノウハウを活かして新ビジネスを創出し、新しい顧客層を獲得する。
自動車部品メーカーがEV向け部品の新工場・設備投資
電動車需要の拡大を見据え、既存の設計・製造技術を高度化しつつ、新たな市場への参入を図る。
ポイント:自社の“核”となる技術力・設備投資を、どのように新市場へ横展開するかが評価されやすい。
2. DX(デジタルトランスフォーメーション)による高付加価値化・生産性向上
スマートファクトリー化・基幹システム刷新
製造ラインの自動化やIoT・AI導入により、検品や在庫管理の効率を高めることでコスト削減と高付加価値化を同時に実現。
EC・物流DXソリューションのワンストップ化
越境ECやサプライチェーンの最適化による業務効率化と新規サービスの創出。
ポイント:既存事業×IT投資による事業変革や省人化、さらには地域経済への波及効果が評価される。
3. 地域資源を活かした新規ビジネス・観光振興
地域産品・地場産業×ハイエンド化・高付加価値化
地産地消や特産物を活用し、高級リゾートや高付加価値の食品製造へ展開することでインバウンド需要も取り込む。
観光施設や宿泊施設のリニューアル・新設
ホテル・旅館、テーマパーク等を大幅リニューアルし、外国人旅行者や国内旅行者の集客力を強化する。
ポイント:「地域創生・インバウンド振興」「地元雇用創出」など、政策との親和性が高いテーマが通りやすい。
4. サーキュラーエコノミー(循環型経済)・カーボンニュートラルへの対応
廃プラスチックの高度選別リサイクルや燃料化施設の新設
環境負荷を下げるだけでなく、新たな売上源(リサイクル素材の販売など)を生み出すことも可能。
GX(グリーントランスフォーメーション)工場への投資
省エネ設備や生産工程の見直しでCO2排出量を削減し、コスト削減&社会的アピールを両立。
ポイント:「環境配慮+地域貢献+新たな雇用」のセットが揃うと評価が高まりやすい。
5. 高度化する市場(半導体・バイオ・先端素材)への参入・拡張
パワー半導体・次世代蓄電池関連の製造ライン新設
今後需要が拡大する車載や再生可能エネルギー領域に対応する大規模投資。
バイオ技術や機能性素材の増産
最先端のバイオ素材・高機能繊維などを量産化し、国内外の需要を取り込む。
ポイント:世界的需要が拡大する領域(半導体、電動車、再生医療など)や国家戦略分野への投資は注目度が高い。
6. 既存事業の再編・拡張と新市場開拓
老朽化工場の移転や大規模リニューアル
単なる設備更新にとどまらず、生産効率や付加価値、販路拡大を実現する。
建設業やサイン業界など従来型ビジネスの抜本改革
垂直統合や製造小売(SPA)化など、新しいビジネスモデルを導入し差別化を図る。
ポイント:国内サプライチェーン回帰や海外依存のリスク低減など、戦略性を伴う再編計画が好評。
採択率を上げる方法
新規事業進出補助金の採択率を高めるためには、事前の戦略立案や審査基準の把握が欠かせません。以下のポイントを押さえることで、計画の完成度を格段に上げることができます。
1-1. 採択されやすい事例に近しい取り組みにする
取り組み
「採択されやすい事例は?」で記載した内容が通りやすいため、抽象化した際にできるだけ近づけた取り組みがお勧めです
1-2. ローカルベンチマーク(ロカベン)の財務スコア「A」を目指す
財務状況の健全性を示す
ローカルベンチマークの財務スコアが「A」評価だと、事業遂行能力の高さが証明され、審査上のプラス要素になります。
早めの財務改善・資金調達計画
補助事業に必要な自己資金や資金繰りを念入りに準備し、事前に金融機関の評価を得ることも重要です。
1-3. 賃上げ成長をできるだけ高い率・多くの人に適用する
賃上げの具体的な計画提示
賃上げの人数・割合などをできるだけ多くする(大規模投資補助金の率をご参考ください)、従業員への還元を示すことで、審査で高い評価を得やすくなります。
従業員に還元される仕組みづくり
業績アップが直接給与アップにつながる仕組みを構築することで、事業の持続性と成長力を表現する事で評価を得やすくなります。
1-4. 最先端の取り組みを加える
DX導入や新技術開発
AI、IoT、5Gなどの先端技術を取り入れることで、競合他社との差別化を図り、高い成長性を評価してもらいやすくなります。
サプライチェーン強化
コロナ禍や自然災害、世界情勢の影響に備えたレジリエンス構築は、重要度が増しています。これらを組み込むと採択率アップに繋がります。
1-5. その他のポイント
採択率の最も高い1回目で申請をする
1回目が最も採択率が高いですので、そこで一球入魂を目指しましょう
事業計画書の完成度を高める
論理的な構成やデータによる裏付け、説得力のあるビジネスモデルを提示しましょう。
関連企業・大学など外部連携を検討
企業間連携や産学連携があると、実現可能性や波及効果の面でプラス評価を得やすいです。
審査基準
現在はまだ詳細が出ていませんが、大規模投資補助金と近しい制度であるため、同様になると思われますので審査項目を解説します。大きく分けて「経営力」「先進性・成長性」「地域への波及効果」「大規模投資・費用対効果」「実現可能性」の5つです。宣言の内容もほぼ同様の内容です。
1. 経営力
長期成長ビジョン
5~10年後を見据えた社会・顧客ニーズを捉え、具体的なビジョンを提示できているか。
高い売上高成長率や売上高増加額を示せているか。
外部環境と内部資源の分析
市場や顧客動向、社内の強み・弱みを分析し、3~5年程度の事業戦略に組み込めているか。
補助事業の売上高が会社全体の売上高に占める割合が高いか。
ガバナンスと管理体制
成果目標や管理方法、社内外への情報発信体制が整備されているか。
経営全体の成長と賃上げを実現する仕組みがあるか。
2. 先進性・成長性
差別化戦略・独自性
競合他社を分析し、自社が継続的に優位性を保てるビジネスモデルか。
生産工程の抜本改革や高い付加価値創出、ニッチ分野での高い独自性など。
労働生産性向上
人手不足解消や労働生産性の大幅アップが期待できる取り組みか。
付加価値の増加額や伸び率は十分か。
売上高の持続的成長
市場全体の伸び率を上回る計画が立てられているか。
3. 地域への波及効果
賃上げや雇用拡大
賃上げ要件を大幅に上回る計画を設定し、従業員に利益を還元する仕組みか。
雇用創出や地域経済への貢献度が高いか。
連携や協業による相乗効果
他社や地域企業とのコンソーシアム構築で波及効果が見込めるか。
サプライチェーンのレジリエンス
自然災害や感染症などのリスクに対応できる仕組みを整えているか。
4. 大規模投資・費用対効果
リスクをとった大規模成長投資
企業の売上高に対する設備投資の割合が高いか。
補助事業の費用対効果
補助金に対して、付加価値の増加額等が見合うか。
既存事業とのシナジーが期待でき、効果的な取り組みになっているか。
行動変容の明確化
従来にはなかった新しい領域へ踏み出し、一段上の成長を狙っているか。
5. 実現可能性
事業遂行体制・財務状況
組織体制や財務状況(ローカルベンチマークスコアなど)から、しっかりと実行可能か。
計画の妥当性・具体性
実施方法やスケジュール、市場ニーズの検証などが具体的かつ合理的か。
金融機関からの計画妥当性確認があると加点要素になる。
市場ニーズの検証
補助事業による製品・サービスのターゲットや市場規模が明確か。
売上高100億円を目指す「宣言」とは?
中小企業が「今後、売上高100億円を超える企業になること」や、そのためのビジョンや取り組みを自ら宣言し、令和7年春頃に開設予定のポータルサイトに公表する制度です。
宣言の主な内容(※詳細は現在検討中)
企業の現状
足下の売上高
賃上げ等の企業目標
直面している課題
売上高100億円の実現目標
売上高の成長目標
達成期間やプロセス
具体的措置
生産増強
海外展開
M&A など
実施体制
経営者のコミットメント
経営者自らのメッセージ など
上記は先ほどの大規模補助金の審査項目、計画資料とおおよそ同じ内容ですね。
「宣言・公表」のメリット
「宣言」マークの活用による自社PR
「宣言」企業だけが使用できる「ロゴマーク」を、広告や名刺などで活用可能
自社の取り組みを効果的にPRできる
経営者ネットワークへの参加
「宣言」企業の経営者同士が、地域・業種を超えて刺激し合える場を構築
経営のヒントや気づきにつながる限定イベントなどへ参加可能
注意点「宣言」に際しては、一定の要件や記載内容の確認があります。詳細はポータルサイトの開設後、正式に公表される予定です。
中小企業成長加速化補助金の流れは?
公募要領・募集情報の確認
対象となる事業や企業規模、補助率、申請期間などを確認します。
補助金ごとの要件を満たしているか事前にチェックしましょう。
事業計画の策定・要件との照合
補助金の趣旨・要件に適合する形で自社の事業計画を策定します。
事業の目的・内容・実施方法・期待される成果などを整理し、補助対象経費を確認します。
申請書類の準備
公募要領で指定される様式(申請書、事業計画書、経営計画、財務諸表など)を収集し、作成します。
課題解決策や数値目標が明確になるように記載し、採択されるためのポイントを押さえましょう。
申請・提出
所定の方法(電子申請・郵送・持参など)で申請を行います。
締切日や必要添付書類などの不備がないか、余裕をもって確認・提出しましょう。
審査・結果通知
提出された申請書類をもとに書面審査やヒアリング(面接審査)が行われます。
採択結果の通知(不採択の場合も通知あり)が届きます。
交付申請・交付決定
採択された後、改めて「交付申請書」を提出し、正式に交付決定を受けます。
ここで事業の実施期間や補助額上限が正式に設定されます。
事業実施・中間報告等(必要に応じて)
交付決定後、補助事業を実際に進めます。
事業の進捗に応じて、中間報告や経費支出状況の報告が必要となる場合があります。
実績報告
事業終了後、実施内容や成果、支出した費用などをまとめた実績報告書を提出します。
領収書・契約書・支出証拠書類なども必要に応じて提出します。
検査・審査(監査)
実績報告を受け、所管機関が審査・監査を行います。
必要に応じて、追加書類や現地調査を求められる場合もあります。
確定通知・補助金の受領
補助金の注意点
交付決定から発注が可能となる事(一回目の採択の場合、10月頃に交付決定され発注可能となると推定)
採択されてから交付決定までに4カ月かかる事もあるため、スケジュールにゆとりが必要である事
工期は最大で約2年であるため、建物の場合は、2~4カ月のバッファを持っておく事
「諸経費」「管理費」などの補助対象外経費は除外されるため、補助額に含めない事
補助事業終了後も、一定期間、毎年事業化等の状況について報告する事
他事業での利用や、担保提供、処分や売却を行う場合、残存価格の補助額に相当する額(売却額)を返還する必要がある事
申請時補助金額算定上は経費は税抜きで換算され、補助金入金時は営業外収益等に入る事
中小企業成長加速化補助金の今からできる事は?
これから制度詳細が出てきますので、最新情報に併せて対応していくことになりますが、現状分析や事業の方向性の整理(各KPI(売上、顧客別売上、製品別売上、顧客数、コスト構造、業種による重要指数)の10年推移を把握した上での課題と対策)はしておくと良いでしょう。また、財務状況は良好であれば点数もよくなると思われますので、これから決算を迎える企業さんはできるだけよい決算を出しておくことお勧めします。
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